子どもの発達課題に応じた支援

子どもは大きく生きる権利、守られる権利、育つ権利、参加する権利を持っています。
この権利を尊重することと同時に、子どもの発達段階に応じた支援が大人には求められます。

この時期に大切なことは特定の人に対して愛着が形成されること。

赤ちゃんは愛着が形成されることで、基本的信頼感を獲得します。逆に愛着が形成されていないと、今後の人間関係に大きく影響することになります。

愛着とはアタッチメントとも呼ばれ、赤ちゃんが特定の人(主に母親)に対して「この人は自分の欲求や感情や意思を理解してくれる、自分は愛されるに値する存在、この人といればいつでも安心だ」という認識を持つこと。つまり、特定の人との親密さを持つ情緒的な絆・つながりのことです。このつながりを中心にして赤ちゃんは、人見知りを始め、探索行動を行い始めます。

この時期に大切なことは自律の心を育むこと。

幼児期の子どもは、基本的信頼感を土台に、一人あそびの世界を広げ、自分の事が自分でできるようになる自律の心を育んでいきます。

この時期の自律は、食事、睡眠、排泄、着脱衣、清潔等の基本的生活習慣に加えて、自分自身の欲求を制御することや自分以外のことも考えて行動する自己制御のことです。自分でやりたいと思う心(自立心)や自分でやれた喜び(達成感)を経験する中で、自律の心は育まれていきます。

この時期に大切なことはあそびを通した多くの経験をすること。自律の心が育まれると、「あれもしたい、これもしたい」といった、自分で発想し行動する意欲(積極性)が芽生え始めます。そしてこの時期の子どもは保育園・幼稚園等の集団生活や集団あそびを経験するようになり、他者との関わり合いを通して子どもはルールの理解や社会性を深めていきます。


この時期に親からの行きすぎた期待の押しつけや、強すぎる管理や強制、暴力的な圧力によって子どもを抑圧することなど、また「してはならない」や「しなさい」という命令ばかりを学んでしまうと、行動の全てにおいて親の目を伺うようになります。出来なかった経験が大きな罪悪感になり、積極的に行動できない心を育む事にも繋がります。

この時期に大切なことは自己肯定感を育むこと。

児童期の子どもは家庭から学校へと生活の場所が広がります。親から少し離れた環境の中で友達や仲間と出会い、その関係の中から自分の得意なものや苦手なもの、できる事や出来ない事に気付きながら能力を獲得する体験をします。また、小学校の中学年から高学年にかけては、子ども達は急速に仲間意識が発達し、多くは同年齢の児童と閉鎖的な小集団(ギャング)をつくって、そこであそびや活動をすることを喜びとするようになります。この仲間は、家族以上に大きな影響を持つものであり、大人から干渉されない自分たちだけの集団であることを望んでいます。


生活や集団の中で失敗と成功を繰り返しながら、自分自身の能力を確認し、時に劣等感を感じながら身の丈を知っていきます。積み上げてゆく過程そのものが、この時期には必要になります。またこの時期にお互いを認め合ったり、反発し合ったりする人との関係性の中で、自己肯定感が育まれていきます。

この時期に大切なことは自分らしさを確立すること。青年期は子どもから大人へと、体が大きく変わっていく時期です。 「自分が周りにどう映っているのか?」、「周りからどのように見られているのか?」などの自意識をもちつつ、「自分が何者であるのか」、「自分がやりたいことは何なのか」、「自分は何になりたいのか?」という自分探しの問いに対する答えを模索する時期でもあります。


つまり、周囲の人達との関係性の中から、自分とは何者なのか?という問いに意識を向け、その葛藤を乗り越える事で、自己を確信してゆく時期です。社会的に自分は自分であるという自信を持ち始めながら自分らしさ(自我同一性)を確立していきます。


自分らしさを確立できないと「自分が何者なのか、何をしたいのかわからない」(同一性拡散)という状態に陥り、対人不安や非行、自分一人の行動は無意味だと感じたりするなど、葛藤や反社会的な行動や選択を行うようになります。